糖尿病でも海外旅行はできる|28年間旅を続けた私が実践する準備と工夫

糖尿病と診断されたとき、まっさきに頭をよぎったのは「もう海外旅行は無理かもしれない」という思いでした。

薬のこと、食事のこと、飛行機のこと。

考えれば考えるほど、不安ばかりが積み重なっていきます。

それでも私は、今も旅を続けています。

アジアを中心に旅を始めて28年。

糖尿病になってからも、準備の仕方を見直すことで、変わらず海外の路地を歩けているのです。

この記事では、実際に私がやっている準備と、旅の途中で気をつけていることを、体験をもとにお伝えします。

医療の専門記事ではありません。

あくまで、持病を抱えながら旅を続けている一人の記録として読んでいただければ嬉しいです。

糖尿病でも海外旅行はできる

結論から言います。

糖尿病でも、海外旅行は十分に可能です。

ただし条件があります。

それは「事前の準備を怠らないこと」。この一点に尽きます。

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診断は「緊急入院してください」から始まった

私が糖尿病と診断されたのは、もう20年以上前のことでした。

日本の病院で告げられた言葉は、今でも忘れられません。

「すぐに入院してください」

そう言われて、次の日にはベッドの人となりました。

入院は2週間に及びました。

点滴につながれ、食事は決められたものだけ。売店へ行くにも許可がいる。

それまで気ままに生きてきた身にとって、体を管理されるという経験は初めてでした。

ベッドの上で天井を眺めながら、自分の体はもう昔のようには動かせないのだと、じわじわ思い知らされたのを覚えています。

1日4回の注射から、今は寝る前の1回に

退院後に始まったのは、1日4回のインスリン注射でした。

朝、昼、晩、そして就寝前。食事のたびに自分でお腹や太ももに針を刺す。

その生活が始まったとき、正直に言えば旅を諦めかけました。

慣れない土地で、時間を計って毎日4回も打ち続けられるのか。

注射器や針をどうやって海外まで運ぶのか。

不安が先に立ったのです。

あれから20年あまり。

今では血糖のコントロールもうまくいき、インスリンは寝る前の1回だけになりました。

1日4回だったものが、4分の1です。

数えきれない国を、変わらず旅しながらここまで来ました。

持病があるからこそ体調に気を配るようになり、以前より慎重で丁寧な旅になった。そう感じています。

不安の正体は、たいてい「わからないこと」です。

何を準備し、どんなトラブルが起こりうるか。

それがはっきりすれば、不安の多くは、対処できる課題へと姿を変えます。

海外旅行前に必ず準備していること

ここからは、私が出発前に必ずやっている準備を順番に紹介します。

どれも特別なことではありません。

ひとつずつ確実に押さえておくことが、安心して旅に出るための土台になります。

主治医への相談

最初にやるべきは、主治医への相談です。

これは絶対に外せません。

実は、私が就寝前1回まで薬を減らせたのには理由があります。

ある日の診察で、私は自分から切り出しました。

「これからも海外旅行を続けたい。旅先でも管理しやすい形に薬を整えたいんです」。

医師は少し驚いた顔をしたあと、真剣に一緒に考えてくれました。

旅という目標を口に出したことで、血糖のコントロールにも本気で向き合えたのだと思います。

渡航先、旅行の期間、現地での過ごし方。

これらを具体的に伝えれば、その人の状態に合ったアドバイスがもらえます。

特に時差のある国では、薬を打つタイミングをどうずらすかが問題になります。

ここを自己判断してはいけません。

半日単位で時間がずれる場所へ行くなら、なおさら医師の指示が必要です。

私は出発の一ヶ月前を目安に相談しています。

早めに動けば、追加の検査や薬の手配にも余裕をもって間に合います。

旅の相談は、思っている以上に前向きな時間です。

「次はどこへ行くの」と医師と話すうち、こちらの気持ちまで軽くなっていきます。

薬の準備と持ち運び

薬は、旅行日数よりも多めに持っていきます。

これは鉄則です。

フライトの遅延、帰国便の欠航、思わぬ滞在の延長。

旅にトラブルはつきものです。

予備がなければ、言葉も通じない土地で薬を切らすことになりかねません。

私はいつも、予定日数プラス一週間分を目安に用意します。

多すぎるくらいでちょうどいい、というのが正直な実感です。

そしてもうひとつ大事なのが、薬は必ず手荷物に入れること。

ロストバッゲージというトラブル

以前、仁川から仙台へ帰る便で、預けたスーツケースが出てこなかったことがあります。

いわゆるロストバゲージです。

到着ロビーのターンテーブルの前で、他の乗客の荷物がすべて流れ終わっても、私のスーツケースだけが出てこない。

カウンターで手続きをし、結局その日は手ぶらで帰宅しました。

荷物が自宅に届いたのは翌日のことです。

幸い、薬はいつも通り手荷物に入れていたので、なんの支障もありませんでした。

もしあのスーツケースの中に入れていたらと思うと、今でも背筋が寒くなります。

無事に翌日届いたからよかったものの、もし数日戻らなければ、旅どころか日々の管理さえ危うくなっていたはずです。

インスリンの温度管理

インスリンを使っている方は、温度管理にも注意が必要です。

高温にさらされても、凍結させても品質が落ちます。

保冷ポーチに入れて手荷物で運ぶのが基本です。

夏場の車内や、荷室の温度は想像以上に上がります。

薬を守るのは自分だけだと考えて備えておきましょう。

お薬手帳・英文書類

意外と見落としがちなのが、書類の準備です。

海外の空港では、注射針やインスリンを機内に持ち込む際、保安検査で説明を求められることがあります。

液体物の制限にひっかかる場合もあります。

そんなとき、英文の診断書や処方内容を記した書類があれば、話が驚くほどスムーズに進みます。

言葉に詰まっても、紙を見せれば伝わるからです。

主治医にお願いすれば、英文の証明書を書いてもらえます。

お薬手帳のコピーも一緒に持っておくと安心です。

私は書類を二部用意し、片方を手荷物、もう片方をスーツケースに分けています。

一方を失くしても、もう一方が残る。

この二重の備えが、いざというときに効いてきます。

海外旅行保険

持病がある旅ほど、海外旅行保険は欠かせません。

海外では医療費が驚くほど高額になります。

ちょっとした受診で、日本の感覚では考えられない請求が来ることもあります。

糖尿病がある場合、思わぬ体調不良で病院にかかる可能性も、健康な人より高いと見ておくべきでしょう。

既往症に関わる治療が補償の対象

ここで注意したいのが、持病の扱いです。

一般的な旅行保険では、既往症に関わる治療が補償の対象外になっているケースがあります。

せっかく加入しても、いざ糖尿病がらみで倒れたとき補償されないのでは意味がありません。

申し込む前に、持病に関連する治療がカバーされるかどうかを必ず確認してください。

最近は既往症に対応したプランも増えてきました。

クレジットカード付帯の保険だけで済ませず、いくつかの内容を並べて見比べることをおすすめします。

少しの手間が、大きな安心につながります。

食事と低血糖対策

糖尿病の旅で、もっとも気を使うのが食事です。

慣れない土地では、食事の時間も内容も普段どおりにはいきません。

移動が続いて食事が遅れることもあれば、思いのほか歩き回って血糖が下がることもあります。

実際、私も移動の途中で食事のタイミングを逃したことがあります。

乗り物に揺られる時間が延びていくのに、まわりに店ひとつ見当たらない。

空腹がじわじわと不安に変わっていく、あの感覚は今でも忘れません。

バックパックにもしもの時の食料を

それでも低血糖に陥らずに済んだのは、バックパックにビスケットとフルーツを必ず忍ばせているからです。

あのとき、袋を開けてビスケットを口に入れた瞬間の安堵といったらありませんでした。

こうした備えは絶対に欠かせないと、身をもって学びました。

現地の食事は、糖質が多かったり量が読めなかったりします。

無理に完食せず、自分の体調と相談しながら加減する。

旅先の食事は、楽しみつつも自分の手でコントロールする意識が大切です。

ちなみに、普段の食事管理については別の記事にも書きました。

旅から帰ったあとの日常の自炊にも、ちょっとした工夫があります。

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海外旅行中に気を付けていること

準備を整えて出発したあとも、旅の途中で意識していることがあります。

ここも体験から得たものばかりです。

飛行機の中で

長時間のフライトでは、機内食の時間が普段の食事のリズムと合わないことがあります。

あらかじめ携帯食を手元に置き、必要なら客室乗務員に相談します。

糖尿病用の機内食を用意している航空会社もあるので、予約時に確認しておくと安心です。

食事のとり方

現地では、つい食べすぎたり、逆に食べそびれたりしがちです。

一日のどこかで自分の体調に合わせて調整する。

そんな緩さを持たせておくと、体がずいぶん楽になります。

水分補給

暑い国では、脱水が血糖に影響することもあります。

喉が渇く前にこまめに口へ運び、水は常に持ち歩くのが習慣になりました。

無理な行程を組まない

若い頃のように、朝から晩まで動き回る旅はもうしません。

一日にひとつ、見たいものを見られれば十分。

休む時間を最初から予定に組み込んでおく。

これが体調を崩さないいちばんのコツです。

緊急時の備え

体調が悪化したときのために、近くの病院や日本語が通じる医療機関を事前に調べておきます。

保険の緊急連絡先も、すぐ取り出せる場所に控えておくと、いざというとき慌てずにすみます。

糖尿病だからこそ旅で学んだこと

持病を抱えての旅は、たしかに気を使います。

それでも、失うものばかりではありませんでした。

無理をしない旅を覚えた

いちばん大きかったのは、無理をしない旅を覚えたことです。

以前、インドで長距離バスに乗ったときのこと。

目的地まで一気に行こうとして、ひどく後悔しました。

着いた翌日は疲れが抜けきらず、せっかくの街をろくに歩けないまま宿で横になっていたのです。

移動のために旅をしているのか、旅のために移動しているのか、分からなくなりました。

それに懲りてからは、同じ距離でも二日に分けて動くようになりました。

途中の町でいったん降り、一泊してから先へ進む。

急がなければ、体にも気持ちにも余白が生まれます。

結果として、通り過ぎるだけだった小さな町の魅力に気づけるようにもなりました。

無理をしない選択が、旅そのものを豊かにしてくれたのです。

健康と向き合うようになった

健康を強く意識するようになったのも、大きな変化でした。

以前は無頓着だった食事や体調管理に、旅を通じて自然と向き合うようになった。

この習慣は、日本での日常の暮らしにもそのまま生きています。

諦めなくていいと知った

何より学んだのは、諦めなくていいということ。

持病があるから、年をとったから。そう言って手放してしまうのは簡単です。

けれど準備さえ整えれば、続けられることは想像よりずっと多い。

私はそれを、20年以上の旅で確かめてきました。

糖尿病と海外旅行まとめ

糖尿病でも、海外旅行は十分に可能です。

必要なのは勇気ではありません。準備です。

主治医への相談、薬の余分な備え、英文書類、持病に対応した保険、そして低血糖への対策。

ひとつずつ整えていけば、あれほど大きく見えた不安も、少しずつ小さくなっていきます。

ただし、体の状態は人それぞれ違います。

この記事はあくまで私自身の体験にすぎません。

旅行を計画するときは、必ず主治医に相談し、自分に合った計画を立ててください。

持病があっても、旅の扉は閉じていません。

準備を味方につけて、また新しい景色を見に行きましょう。

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